2012/10/07
本日の書評より
![P1030919[1]](http://blog-imgs-44.fc2.com/a/o/a/aoamanatu/20121007143624d08.jpg)
死体は見世物か
「人体の不思議展」をめぐって 末永恵子<著>
死者と生者の関係問い直す
90年代から全国で開催され、話題となった「人体の不思議展」。近くて遠い人体の展示は、多くの観客を動員した。しかし、展示された人体は、特定の誰かの死体である。「その人」じゃ人格を持ち、他者と関係してきた具体的存在だ。その死体が皮膚を剥ぎ取られ、本人の望むはずのないポーズで展示された。著者はこの展示会に、死体への冒涜を読み取る。
展示会のきっかけは、ドイツのハーゲンス画開発したプラスティネーション標本という死体保存技術にあった。日本の解剖学者はこの技術に注目し、日本での政策を熱望。その啓蒙活動として、展覧会を企画した。1995年、日本解剖学会は創立100週年記念行事として「人体の世界」展を開催。これはプラスティネーション標本を一般公開した世界初の機会で注目を集めた。
展覧会の成功に目をつけたのは起業家たちだった。彼らは死体の商業展示をビジネスチャンスととらえ、「人体の不思議展」を開催。学者のみならず、行政やマスコミも後援し、全国を巡回した。
そもそも展示された死体はどこから来たのか。当初はハーゲンス作成の標本が使用されたたが、興行会社そのトラブルで関係は決裂。すると、主催者は入手先を中国に求めたが、ここで疑惑が浮上する。死体の出所が不透明なのだ。標本となった死体は誰なのか?本人は生前、確かに献体の意思を示したのか?
商品化された死体と、それを見世物に消費する来場者。会場には慰霊碑・献花はなく、死体の尊厳への配慮は見られない。一方で、我々は博物館でのミイラ展示をあまり問題視しない。死体展示が許容されるボーダーラインはどこにあるのか。
この協会を見定める作業は、必然的に死者と生者の関係の問い直しにつながる。本書は、きわめて重要な哲学的問いを投げかけている。
評・中島 岳志北海道大学准教授・アジア政治
==================10月7日朝日新聞、書評欄より、引用終わり
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へぇ、「人体の不思議展」とはこういうものだったとは知りませんでした。
いや、厳密にいえば知っていたんですけれどね、
テレビでしつこくCMやっていましたから。
でも、生物の授業のようなものか
あるいは科学館の展示のようなものかと思っていました。
しかし、その画像をネットで見て愕然としました。
とても当ブログでUPできるものではありません。
こんなものに650万人以上も入場していたとは・・・
「死体の商品化」というキーワードで思い浮かぶのは、
臓器移植の問題です。
やっぱりありましたね、こういう記述が・・・あるブログからの抜粋です。
==============================引用はじめ
蛇足だが、1995年に東京で行われた世界初のプラスティネーション人体展であり、その後のハーゲンスの『ボディワールド』と日本の『人体の不思議展』の両方の開始点となった日本解剖学会主催の「人体の世界」が開催された当時は丁度臓器移植法案が議論されていた時期である。
そしてこれ以降日本で開催される「人体の不思議展」には日本赤十字社、日本医学会、日本医師会、日本歯科医学会、日本歯科医師会、日本看護協会など、この人命と人権を軽視する展示会にこれでもかという程に日本の医学界の権威が後援に付いていた訳だが、新たに成立した臓器移植法に際し献体を奨励しプロモートする風潮が日本の医学会に強く働いていたのかどうかは知らない。
社会的批判を受けこれらの医学界の権威が後援を取り下げたのが2007年だが、事実としてそれが「人体の不思議展」側に権威付けとして利用されていた。
=================================引用終わり
そして、またあるブログからです
=================================引用はじめ
『人体の不思議展』東京展の実施概要 (2003年9月4日~2004年2月1日)
主催 : 人体の不思議展実行委員会/日本アナトミー研究所
後援 : 日本赤十字社/日本医学会/日本医師会/日本歯科医学会/日本歯科医師会/日本看護協会/東京都/東京都教育委員会
特別協力 : 株式会社東京国際フォーラム
企画運営 : マクローズ
監修 : 人体の不思議展監修委員会
委員長
森 亘 日本医学会会長・東京大学名誉教授・学士院会員
織田敏次 東京大学名誉教授・日赤医療センター名誉院長、学士院会員
委員
井村裕夫 総合科学技術会議議員・京都大学名誉教授・学士院会員
高久史麿 自治医科大学学長・東京大学名誉教授
矢崎義雄 国立国際医療センター総長・東京大学名誉教授
増田寛次郎 日赤医療センター院長
佐藤達夫 東京医科歯科大学名誉教授
江藤一洋 東京医科歯科大学副学長・歯学部長
養老孟司 東京大学名誉教授
開原成允 (財)医療情報システム開発センター理事長、東京大学名誉教授
仲村英一 (財)結核予防会理事長・元厚生省健康政策局長
草原克豪 拓殖大学副学長・元文部省生涯教育局長
片山 仁 元順天堂大学学長
廣澤一成 東京大学名誉教授
山鳥 崇 神戸大学名誉教授
後藤 昇 昭和大学教授
隈崎達夫 日本医科大学教授
南 裕子 日本看護協会会長
人体の不思議展』東京展の実施概要 (2003年9月4日~2004年2月1日)
主催 : 人体の不思議展実行委員会/日本アナトミー研究所
後援 : 日本赤十字社/日本医学会/日本医師会/日本歯科医学会/日本歯科医師会/日本看護協会/東京都/東京都教育委員会
特別協力 : 株式会社東京国際フォーラム
================================引用終わり
もう間違いないようですね、死体の商品化(いや、そうではないかもしれない
私には脳死を死と思えないので、脳死であればそれは生体の商品化。)に
医学界、教育界が深くかかわっている。
そもそも「人体の不思議展」という「看板」がおかしいのではないか、
「看板」を見て、展示を見に行った、子どもも多かったのではないでしょうか。
「人間の死体標本展」とか「死体(生体)保存技術展」とか
銘打つべきだったのではないでしょうか。
「死体(生体)保存技術展」では必ずしも人体である必要はありません。
動物で十分です。
でもそれでは、人体の商品化というものにつながらないから、
「人体」という言葉を看板に入れなければならなかったのでしょう
![a1603ecd9b5b54025a395e55652c61be29664e3b.85.2.9.2[1]](http://blog-imgs-44.fc2.com/a/o/a/aoamanatu/20121007144305062.jpg)
ちなみに、この書評では、ミイラという言葉が出てきます。
外国ではどうかは知りませんが、
私は、日本のミイラを見たことがあります。
山の中のひっそりしたお寺で、
ガラスの厨子に納められ、仏様として丁寧にまつられていました。
見るというより、ありがたい仏様を拝ませていただくのです。
拝観料は取っていたと思いますが、パンフレット代、説明代ですね
お坊さんがミイラ(即身仏)になられたいきさつは、
仏教徒として、納得できるものでした。
今後、そのような貴重な仏様を、山の中の小さなお寺では、
管理しきれなくなることは考えられます。
そのときは博物館で展示するということが、起こるかもしれませんが、
それはそれで仕方がないことと思います。
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渡海上人になることが恐ろしくなり、
命が惜しくなってしまう、僧の話。
横蔵寺のあのミイラ(舎利仏)には、心の迷いはなかったのか・・・・
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本来「人体の不思議」というのは、物質だけでなく、
そこに心だとか暖かさだとか、思考だとか、自然治癒力だとか、
目に見えないものがあってこその「人体」であり「不思議」なんだろうと思います。
それが感じられないような「物」であれば、
やっぱり「物」としか扱われていなかったのかもしれません、
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コメント
管理人のみ閲覧できます
2013/01/01 09:48 by 編集
No title
古い記事まで読んでくださってありがとうございます。
>書くのは勝手、自由ですから。
とおっしゃるのでしたら、コメントは公開にしていただきたかったです。
私は斜に構えてなんかいません。
臓器移植、死体の展示には、真っ向から反対しています。
もちろんドナーカードにも、「臓器を提供しない」に丸をつけるよう、
大切な人に、積極的にお願いしている立場のものです。
ダメなものはダメと、リスクを承知ではっきり書いているんです。
日本医学界の良心と思われる人たちは、当ブログで紹介させていただいています。
2013/01/01 10:42 by フォーミディブル URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2013/01/03 12:33 by 編集